大判例

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仙台高等裁判所 昭和46年(ネ)370号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決中控訴人敗訴部分を取消す。被控訴人は控訴人に対し金一八万八、〇〇〇円およびこれに対する昭和四四年七月一日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張および証拠関係≪省略≫

理由

控訴組合は、割賦購入あっせん業を営むものであり、訴外菅原善との間に(1)同訴外人は控訴組合発行の購入票を所持する者に商品を売り渡し、(2)控訴組合はその代金相当額を右購入者に代って菅原善に支払うことを内容とする加盟店契約を締結したこと、被控訴人は昭和四三年九月二五日控訴組合発行の購入票をもって菅原善の取扱商品たる自動車一台を代金四〇万円で買い受け、控訴組合は被控訴人の承諾を得て同人に代って右代金相当額を菅原善に支払ったこと、被控訴人は同日控訴組合との間に右代金を次のとおり分割して支払う、すなわち、昭和四三年一〇月から同四四年七月まで毎月末金二万六、五〇〇円づつ、同年八月から同年一二月まで毎月末金二万七、〇〇〇円づつ割賦で支払う旨約したこと、以上の事実は当事者間に争いがない。

そして、≪証拠省略≫によると、被控訴人は控訴組合との間に右割賦金の支払を一回でも怠ったときは分割支払の利益を失い残額を一時に請求されても異議がない旨の特約をしたことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はないが、後に判示するとおり右自動車については被控訴人と控訴組合との間に割賦売買契約が成立したものと解され、その契約における賦払金の支払に関して右特約がなされたものであることをあわせ考慮すると、右特約は割賦販売法五条一、二項に照らし無効というべきである。

しかし、被控訴人が控訴組合に対し昭和四四年五月末までの割賦金合計金二一万二、〇〇〇円を支払ったことは控訴人の自認するところであるから、被控訴人は控訴組合に対し他に特段の事情のない限り、右割賦金残金一八万八、〇〇〇円およびその内金たる各割賦金に対する各弁済期の翌日以降支払ずみまでの民法所定の遅延損害金を支払うべき義務があることとなる。

そこで、被控訴人の同時履行の抗弁について検討するに、≪証拠省略≫によると、控訴組合は宮城県栗原郡、登米郡および岩手県西磐井郡一円の区域をその地区とし、その地区内に店舗を有する商店経営者を組合員として組織される事業協同組合であって、その事業として、組合員の取扱商品についてのクーポン券(購入票)の発行、組合員に対する右クーポン券による売掛金の立替払い等を行い、これによって組合員の事業の助成をはかることを目的とするものであること、菅原善は栗原郡若柳町で「丸善自動車」なる商号で自転車、オートバイ、自動車等の販売業を営み、前示加盟店契約を結んで控訴組合の組合員になっていたものであること、被控訴人が買受けた自動車は原判決添付物件目録記載の本件自動車であるが、その買受けにあたって、被控訴人は菅原善の店頭に備付けの「ホームクーポン購入契約書」と題する控訴組合宛の書面に所要の記入をなしたうえ、これを訴外人を経由して控訴組合に差し入れたものであって、右契約書の授受をもって控訴組合と被控訴人間になされた約定は、前示割賦支払の方法および期限の利益の喪失に関する定めのほか、本件自動車の所有権は被控訴人の控訴組合に対する前示割賦金の支払がすむまでは控訴組合に存し、右支払完了の後にはじめて買主たる被控訴人に移転するものとするというものであること、そして菅原善が直接買主たる被控訴人に対して本件自動車売買代金を請求する場合もあることを予想させるような取決めは何ら存せず、むしろ右訴外人は右契約書の連帯保証人欄に署名押印して被控訴人の控訴組合に対する前示割賦金債務の支払を連帯保証していること、以上の事実が認められ(る。)≪証拠判断省略≫

そして、一般に協同組合組織によるいわゆるクーポン(チケット、購入票)販売においては、通常加盟店たる特定の販売業者と利用者(消費者)間に商品売買契約が成立したものとみるべきことは言うまでもないが、しかし例外的に割賦金完済まで商品の所有権が協同組合に(加盟店にではなく。)留保される場合には、その所有権は加盟店頭で現実の取引があったときに加盟店から協同組合に移転し、協同組合と利用者間に所有権留保付割賦売買契約が成立したものと解するのが相当である。そうだとすると、本件においても前示の各認定事実および当事者間に争いない事実のもとでは、本件自動車の割賦売買契約は実質的には控訴組合と被控訴人間に成立したものとみることができ、したがって、控訴組合は、本件自動車の売主としての地位に基づき、買主たる被控訴人に対し、自ら本件自動車(これが既登録自動車であることは後に判示するとおり。)の所有権の登録名義を被控訴人に移転する手続をなすべき義務を負うものというべきである。≪証拠判断省略≫

ところで、控訴組合の右変更登録申請義務は、割賦金支払の時期方法に関する前示約定に鑑み、原則的には被控訴人が最終の割賦金の支払を完了するのと引替えに履行されるをもって足りるものと解すべきであるが、しかしながら≪証拠省略≫によると、本件自動車は被控訴人がこれを買受けた当時から横浜日産モータース名義に登録されていることが認められるところ、被控訴人主張の次の事実、すなわち菅原善が昭和四四年四月倒産して行方をくらましたこと、そこで控訴組合は、本件自動車の登録名義を被控訴人名義に変更するについては控訴組合としてももはやどうにもならない旨被控訴人に告げたことは控訴人において明らかに争わないので自白したものとみなすべく、右のように契約後の事情変更により控訴組合の右変更登録申請義務の確実な履行を期待することができなくなった以上、被控訴人のみに対して一方的に右割賦金支払債務につき当初の約定に基づく先履行を強いることは、信義の原則に反するものというべきであるから、被控訴人は右事情変更後の割賦金支払債務の履行につき、控訴組合の右変更登録申請義務の履行との間にいわゆる同時履行の抗弁権を取得するに至ったものと解するのが相当である。したがってまた、被控訴人が、本件自動車の所有権の登録名義を得ることができないのではないかとの不安を感じて、昭和四四年六月分以降の各割賦金をその約定の支払期日に支払わなかったのは信義則上やむを得ない措置であって、被控訴人はこれにつき履行遅滞の責を負わないものというべきである。

以上の次第で、控訴人の本訴請求は、控訴人において本件自動車の所有権の登録名義を被控訴人名義に変更すべく手続をするのと引替えに金一八万八、〇〇〇円の支払を求める限度においてのみ理由があり認容すべきであるが、その余は失当として棄却を免れない。

よって、右と結論を同じくする原判決は相当であって、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、民事訴訟法三八四条、九五条、八九条に従い主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本晃平 裁判官 石川良雄 小林隆夫)

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